2009年1月7日水曜日

都会のヨクボウ


 札幌に来ている。ほとんど私用だが、仕事もすこしばかりある。ゾンメルを買うのだ。
ゾンメルとは、山スキーのことだ。短く幅が広い。裏面にシールが貼られている。造林や狩猟など山仕事をする人々に愛用されてきたスキーだ。

 来年度から始まる「野外活動」の授業で使う。20足ほどのゾンメルを買う予算がついた。しかし、このスキーは現在、札幌の秀岳荘という店でしか扱われていない。
 というわけで、似合わない「商談」に来ているのである。

 そして今、紀伊國屋書店の二階で「アラビアの真珠」を手に入れた。その真珠は熱く濃い。触れるとしびれるように熱が伝わってくる。琥珀色をしている。唇に近づけると表面からの熱が輻射してくる。かすかに、濃厚に甘い香りがする。手に持つと、生き物のように震える。すこしだけ口に含む。香りはさらに強まり、心地よい苦みが喉の奥へと広がっていく。飲み込むと、胃の中からも香りが立ってくるように感じる。もちろん「アラビアの真珠」とは、コーヒーのことでした。
 そんな真珠がたった530円。しかもサービス券があるから支払うのは、430円。

 それにしても、都市というのは、ニンゲンの欲望にとことん応えるようにできているなあ、と思う。何を今更、といいう気もするが。
 朝、ホテルを出て、地下鉄に乗る。目的地近くに黙って運んでくれる。書店に行き欲しかった本を手に入れ、そのまま二階でインターネットに接続して自分の書きたいことをこうやって書き散らかしていられるのだから。
 便利でありがたいのだが、この状況が当たり前と感じるようになったら、それはとても怖いことであるような気がする。いや、怖いことだ。

 人間は、こうやって「文明」をどんどん巨大化させてきたのだろうなあ。 

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