2009年7月4日土曜日

探鯨譚(クジラをさがす話) その5


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 あくまでもひとつのファンタジーである。
 クジラは、本当はニンゲンよりはるかに賢く、世界と世界の仕組みを理解し超然といきているのではないだろうか。クジラに限らずすべての動物がそうなのかも知れない、という仮定が成り立つような気がする。

 ホエールウォッチングの船が近づくとサッと海中に姿を消す。次に浮上する点は日ロの中間ラインを超えてロシア側に少し入った点であることが、少なからずあった。本当に彼らは日本のウォッチング船がこのラインを超えられない、というニンゲン側の事情に精通しているかのようだった。
 だから我々がクジラの姿をジックリ見られるのは、偶然ではなくクジラの側に「まあ、見せてやってもいいか」という意志のある時だけなのかも知れない。何百キロも離れたクジラ同士が連絡を取り合って、
「今度はキミの番だから少し姿をみせてやれよ」
「わかったヨ。でも、あの船の船長はスピーカーでよくしゃべってうるさいからナア」
「まあまあ、そう言わずに。明日は僕が出て行くから」
などとやりとりしているのかも知れない。

 もちろん彼らはこのような言葉を持っていないかも知れない。それは、「言葉を持たないから遅れている」のではなく、「言葉を必要としないほど進化している」のかも知れないではないか!

 以上、何の根拠もない幻想であるが、彼らの行動や彼らのリズムに接するとき、なかなか頭から離れないのも事実である。 

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