2009年8月8日土曜日

知床岬行(1)

 出発の朝は雨だった。強い雨の中を次々と参加者が集まって来る。大ホール出発式を行った後、皆、バスに乗り込んで出発点の相泊(あいどまり)へと向かう。相泊に着く頃、雨は止んでいた。
 「海岸線を歩く」というと波打ち際を淡々と歩き続けるような印象を持つかも知れないが実際は違う。第一日目の行程は、相泊からモイルス(モイレウシ川河口)までだ。距離は約8km。カモイウンベ→崩れ浜→観音岩→化石浜→でばり→タケノコ岩の順に通過していく。カモイウンベまでは、昆布採りの番屋が立ち並び電気も来ている。漁業者が陸路も利用するので石浜ではあるが、比較的平坦で歩きやすい。崩れ浜に近づくにしたがって大きな石が混じり始め、歩行のリズムが乱される。この傾向は進むにつれて大きくなる。それでも、観音岩までは、普通の浜歩きである。
 海岸は、観音岩で行き止まりとなる。進むためには海岸線より少し山側にある岩の鞍部を超えなければならない。浅いチムニーがルートになっている。岩を登ると鞍部はちょっとした広場だ。小さな観音像が岩のあちこちに安置されている。沖縄にもこんな場所があったなあ。子どもたちの安全を考えてこの場所はザイルを使って一人ずつ登る。全員が通過するのに一時間以上を要した。 
観音岩を過ぎると道は、少しの間、低い海岸段丘上の森の中を進む。やがて海岸に出ると化石浜である。ここは、崩れ浜よりも一層歩き難い不揃いな岩から成っている。この石浜が尽きると「でばり」と呼ばれる海食台の上を進む。ここは、満潮の時や時化の時には通行できなるのだという。でばりを過ぎると大きな火山岩屑のかたまりが崩落して散らばり迷路のようになっている海岸を進む。この岩屑は、知床岳の火山活動によるもので、ガラス質の 大きな晶が鋭く突出していて体のあちこちが傷つけられる。僕もここでズボンのお尻に大きなかぎ裂きを作ってしまった。
 そして、道はタケノコ岩で行き止まる。タケノコ岩もザイルを使って、ちょっとした鞍部を乗り越えた。小一時間かかった。
 タケノコ岩の上に立つと眼前にモイルス湾が広がる。ふと千島列島のウシシル島の景色を連想した。ここにベースキャンプを設ける。

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