2011年5月9日月曜日

大腸菌と放射線

 昨夜は羅臼特有の「局地風」がわが家を直撃して、眠っている途中で何度も目を覚ました。
 「風が強くて眠れなかった」と言い切るほど繊細ではないので、眠っていないわけではないが、なんとなく寝不足のようなスッキリとしない気分で一日を過ごした。

 「汚染と腐敗は違うんだ」
 かなり昔のことだが、僕の親しい友人が彼の奥さんに向かって言った言葉だ。
 前日の残り物の匂いが少し怪しくなっていたにもかかわらず、それを食べてしまおうとした彼女に言ったのだ。

 彼は獣医師だ。
 獣医師は、病畜の診療だけでなく、食肉の検査や公衆衛生、食品衛生などの仕事をする。いわば食品管理のプロだ。
 腐敗とは、食品が種々の腐敗原因菌の増殖によって変質し、不快な臭気など伴う物質に変わることで、必ずしも有害な物質が生まれるとは限らない。
 汚染とは、食中毒菌が増殖し、その菌自身や菌の作り出す毒素が人体に有害な作用をすることで、食品の味や匂いに何の変化も起きない場合もある。まあ、たいていは有害な菌も無害な菌も同時に増殖していくから「腐った臭いのするものはアブナイ」と考えて間違いないのだが。
 ただ、ほとんどの食中毒は、味にも匂いにも変化のない食品で起きている。

 食中毒を起こした焼き肉店の生肉も一見したところ、新鮮で安全に見えたのだろう。

 目に見ない危険との戦いがいかに難しいか、何度も繰り返される食中毒の例を見ればよくわかる。

 放射線も目に見えないという点では食中毒菌と似ている。知らないうちに身をさらしてしまうこともありうる。多くの一般の人が、累積被曝線量を正確に特定することすら難しい。

 もうひとつ厄介なのは、被曝による障害のあらわれ方がはっきりしないことだ。
 「1000人のうち50人に癌が発症する」というような言い方しかされないから、自分人の運命がどうなるかがわかりにくいわけだ。
 まあ、食中毒菌が身体に入っても食中毒を発症する人としない人がいるわけだが。

 どちらも人為的な原因で起きている点も似ている。
 コストを切り詰めたために危険が増大した、という点も共通している。

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