2011年8月7日日曜日

「へつり」で進む海岸線

 午前中、エコツーリズム協議会に関連する科学委員会との懇談会に参加した。

世界遺産地域の保護と利用の両立を図るためのエコツーリズム戦略について、掘り下げた話し合いができた。
 しかし、やっぱり単純に考えれば考えるほど、利用すればするほど保護が疎かになっていくことに違いない。
 利用の総量規制を行わないならあまり意味がないし、観光を業とする人たちは、できるだけ緩い規制で済ませることを望んでいるだろう。

 「エコツーリズム戦略」が収奪的な利用の免罪符として使われることだけは、止めなければならないだろう。


 知床岬行の話をひとつ。

 「へつり」という進み方をする場所も多い。
 崖が直接海に落ちているような場所で、岩に張り付きながら横に移動することを言う。 それほど長い区間ではないが、数十メートルくらい連続している場所が何カ所かある。足下は海。それも明らかに人間の背の立たない深さの海で、登山靴を履き、思い荷物を背負っている自分が、その深みに落ちた時のことを想像すると恐怖感を覚える。
 そんな場所は、ベースキャンプのあるモイルス湾から知床岬に行くまでの間に数カ所ある。
 そして、そればかりではなく、相泊とモイルスの間にもあって「デバリ」と呼ばれている。そこは初めて探検隊に参加した小学校4年生の子どもたちでも通るのだ。

 知床半島の海岸の崖は、海中で急冷されたマグマによってできており、手や足をかけることの出来る(ホールドの利く)手がかりは無数にある。したがって見た目ほど「へつり」は、難しくない。
 それでも手がかりとなる岩石はハイアロクラスタイトと呼ばれるガラス質むき出しのスルドイ角を持っていて、新品の革製ロッククライミング用グローブが、あっという間にボロボロになったほどだった。

 このような場所を、三点確保を基本に、アメーバのように這い進むのが「へつり」である。

 以上、全然「落ち」の無い文章になってしまったけれど、「へつり」の話だから落ちは無い方がよいだろう。

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