レイチェル・カーソンが「沈黙の春」を書いてから来年で50年になる。
この50年間、彼女の予言は、ほぼ的中し続けてきたと言えるだろう。
科学者や技術者の必死の努力で一定程度、被害が食い止められたりしている例はあるが、本質的な構造はカーソンの指摘通りだ。
むしろ予言以上の惨禍をもたらしているものもある。
例えばダイオキシンによる汚染は、ベトナムにおびただしい胎児性の畸形の出現をもたらした。
米軍は「枯葉作戦」と称して、ベトナムの熱帯雨林に2・4・Dや2・4・5・Tなどの除草剤を大量にぶちまけた。これらの除草剤の製造過程で、副反応が起き、ダイオキシンが生成されるのだ。
ダイオキシンは、染色体の異常を引き起こし、催畸形性をもっていることが知られている。
カーソンの時代には、まだそこまでの詳しい作用は知られていなかったのだろう。そこを見通して、あの本を出したところに偉大さがある。
そして、世間の人々は、はじめのうちカーソンの警告に耳を貸そうとしないばかりか激しい反発も起きている。
どちらが正しかったか、今となっては明らかである。
放射線によって生物が受ける障害も、ダイオキシンと同様に染色体異常が引き起こされるという点でよく似ている。
急性の障害は別として、障害が顕在化するまでにある程度の時間を要するというところも似ている。
今年の原子力発電所事故の影響を皆が理解するまで、あと50年を要するのだろうか。
ニンゲンは、そこまで愚かな生き物なのだろうか。
少し前の産経新聞に、経済同友会の長谷川閑史代表幹事(武田薬品工業社長)が、都内で講演し「原発は50年先に必ず貢献する」と述べたという記事があった。
驚いた。
50年経ったら、原子力発電廃止という主張と、推進するという主張のどちらが正しかったか、どちらが愚かだったか、決着がつくだろう。
その時は、もう長谷川さんも僕もこの世の人ではないだろうが。
しかし、このことは誰かにきちんと見極めていてもらいたい。
2011年9月7日水曜日
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