2011年10月18日火曜日

知床の川とヒグマ

 研究会があり、そのエクスカーションで羅臼町内の川まで行った。

 最近のこの川にはカラフトマスが多数遡上していて、それを目当てにヒグマが集まってきている
 人間との濃厚な接触が続くと、それらのヒグマの中から危険な個体が生まれることも心配される。そうなるとヒグマ生息地域と人の生活圏の重なり合う羅臼町は危険きわまりない事態に陥るのは明白だ。

 ところが、この川のカラフトマスに群がるヒグマに、カメラを持ったニンゲンが群がっていた。
 それもほとんどすべてが町外、中でも本州からの来訪者らしい。

 彼らは、プロのカメラマンが長時間かけ、苦痛に耐えた末にやっと撮影した写真と同じような写真を手軽に安直に撮影したいらしく、カメラを構えてヒグマを待ち構えている。
 ルサ川河口部には漁業の番屋もたくさんあり、人の住む集落からも近い。危険を未然に防ぐためにそこまで出てきたクマは追い払いの対象になってきた。

 そのような地元の事情を知ってか知らずか、ヒグマを自分たちの被写体としてしか見なしていないような写真愛好家がいて、追い払いの業務にクレームをつけているらしい。
 これは、明らかに業務に対する妨害行為だし、羅臼町の住民を危険にさらす犯罪的態度である。

 大部分の写真愛好家は、良心的で、模範的にマナーを守っているものと信じたいが、現実にこのような写真愛好家が一部にいることは、嘆かわしい。

 巨大で強力で物静かなヒグマ。
 キムンカムイと呼ばれ、畏怖され感謝されてきたヒグマへの畏敬の念など微塵も持っていないのだろう。

 断言するが、こういう人々が日本の自然の状況を悪くしているのだなあと実感した日であった。

2 件のコメント:

  1. そうでしたか。

    旅行中にヒグマを見かけて興味をもち、家に帰ってからネットで調べたら過去には凄惨な事件があったと知りました。都内に住んでいるとクマ=ぬいぐるみ・動物園というイメージが強かったのですが、そうか、猛獣だったんだと実感しました。

    私達もそうですが、このカメラマンの方々もまさか自分を襲うことはないだろうと思っているのでしょう。反省しきりです。

    知床の自然が大好きなのでいつまでも今のままであってほしいですね。野生に踏み込むことのないよう自覚したいものです。

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  2. berryowlさん:

    コメントありがとうございます。
    ヒグマは、間違いなく猛獣です。日本に棲む最強の野生動物と言えるでしょう。
    しかし、性質は臆病で繊細、注意深く行動し、食性も木の実や植物、アリなどの昆虫類を主とした雑食で、積極的にヒトや他の動物を襲うことは、ほとんどありません。
    実際に出会ってみると、その穏やかさを直接感じ取ることができるでしょう。
    そのため、アイヌ民族とも長い間共存して来ることができたのでしょう。

    そうは言っても強力な実力をもった野生動物であることに変わりはなく、人間の側で危険な個体を作り出さないように配慮することが必要です。

    アイヌ民族も「キムンカムイ」(山の神様)と「ウエンカムイ」(悪い神様)と呼び分けて、危険な個体を区別していました。
    「ウエンカムイ」と作り出すのは、多くの場合、人間の側に原因があります。

    カメラマンの中に、川のサケの調査に行った人に対して、
    「こっちは土日の休みに遠くからワザワザ写真を撮りに来ているんだから、オマエラがちょろちょろしていると邪魔なんだ」というような罵声を浴びせてくる人もあったとか。
    無気になるのはわかりますが、こんな人は、もう一度頭を冷やしてから知床に来るべきだと思いますね。

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