2011年12月5日月曜日

「緩やかな死」への序曲


 3日の土曜日、札幌で開催された、「東日本大震災・福島原子力発電所事故を考えるシンポジウム」の講演者の一人、松井英介さんの話が印象的だった。

 まず、松井先生は、「外部被曝モデルと内部被曝モデル」というヨーロッパ放射線リスク委員会(ESRR)の発表を紹介してくれた。
 それは、外部被曝と内部被曝は、まったく別もので、許容できる線量限度を同じ基準で論じることはできない、というものだ。
 内部被曝の例として「核施設白血病」、「チェルノブイリの子どもたち」、「『劣化』ウランに被爆した湾岸戦争の帰還兵」、「イラクの子どもたち」などの具体的な例を挙げて説明してくれた。
 そして、国際放射線防護委員会(ICRP)の急性外部被曝モデルは根本から見直す必要があると指摘した。要するにICRPは原子力発電を推進していこうという組織だから、呼吸や飲食によって体内に入った放射能から出る放射線によって起こる内部被曝が人体に及ぼす影響を小さく見積もりすぎていると言うのだ。
 そして、日本政府が、それらよりもさらに低線量域のリスクを無視している様子がわかりやすい図に示されている。
 彼の著書、「見えない恐怖ー放射線内部被曝」にその図が載っている。

 今年の本当は一位かも知れない流行語「ただちに人体への影響はありません」は、全く正しかったのである。
 「『ただちに』影響はないが、慢性的な影響については、知らないヨ」という事なのだ。

 講演の中では、肺に入ったアルファ線源となる放射能が、ウニの棘のようにあらゆる方向にアルファ線(アルファ粒子線)を放射してい様子を撮した、恐ろしい写真も紹介されていた。

 チェルノブイリの子どもたちに起こっている病変は、もはや他人事ではない。
 「除染」をどれほど行っても、すでに体内に取り込まれた放射能は、「緩やかな死」へのカウントダウンをすでに始めているのである。

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