2012年3月23日金曜日

「日本海」の旅路 ①・・・アール・ブリュット

16日、「寝台特急日本海」最終列車に乗ってから1週間が経った。早いものだ。
 あの夜、「日本海」は、1023キロを走破し、僕を大阪に連れて行ってくれた。

 大阪に着いてまず、行った場所は大阪天満宮。
 さすが、学問の神様へお参りに行くんだ!と思った人は、いないと思うが、その推察通りだ。大阪天満宮の隣にある「大阪繁昌亭」に行ったのだ。

 翌日の夕方、僕は神戸にいた。
 朝から播州赤穂を訪ねて、赤穂城跡などを歩き回った。赤穂市立歴史博物館も見学したが、その受付に置かれていたパンフレットが目にとまった。

 兵庫県立美術館で開かれている「解剖と変容」というタイトルの展覧会だ。副題に「アール・ブリュットの巨匠たち」とあった。
 「アール・ブリュット(Art Brut) 」というのは、フランス人画家・ジャン・デュビュッフェがつく語で、「生(なま、き)の芸術」という意味なのだそうだ。
 英語では、「アウトサイダー・アート(outsider art)」と言う。ただし、このカテゴリーについては、芸術家たちの間で論争があるようで、「両者は微妙に違う」という主張もある。

 一般に、正式な美術教育を受けず、発表することを目的としないで作品を制作しつづけている人々の芸術のことを意味している。
この展覧会では、「専門的な美術教育を受けていない作り手が、芸術文化や社会から距離を置きながら制作した作品」と説明されていた。
 多くの場合、社会との交渉を断っている人々が、団体に所属して発表することをせず、もちろんその作品で生計を立てることもせず、独学で制作を続けた芸術作品で、知的障害者、精神障害者あるいは精神病患者の作品なども含まれる。

 中には、その人が創作活動をしていたことすら知られず、死後に作品が発見されたというケースもある。

 以前、アロイーズという人の作品展を観たことがあった。今回はアロイーズの作品は含まれていなかったが、日本初公開のチェコ出身の画家アンナ・ゼマーンコヴァー(1908‐1986)とルボシュ・プルニー(1961‐ )の作品が展示されていた。

 ゼマーンコヴァー の絵は、学生時代に顕微鏡を覗きながら一心不乱に描いたスケッチを思い出させてくれた。もちろん描かれているものは、作者の頭の中にだけ棲んでいるバクテリアや原生動物たちなのだろう。あるいは、生物体内の架空の組織や器官。
 展示を観てまわっているいるうちに、その生命感がこちらの体内にも注入されてくるような不思議な高揚を覚えた。
 無計画な旅だったのだが、最後の「日本海」が導いてくれた縁だったように思う。

 兵庫県立美術館  http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1202/index.html

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