2012年3月30日金曜日

ハクチョウたちの旅




 午前中、釧路へ行った。
西別川沿いの草地にハクチョウとヒシクイの群れが飛来していた。
 ハクチョウは、編隊を組んで北へと渡って行った。ハクチョウが渡るとき、間宮海峡に低気圧がある。今日の天気図を急いで調べてみた。
 案の定、低気圧があった。低気圧に吹き込む南東からの風に乗って、彼らはサハリンあたりまで一気に飛ぶのだろう。

 気圧の配置をどうやって知るのか?
 いや、もちろん彼らが天気図を知っているわけはない。知っているはずはないのだが、渡りの絶好機であることをどうやって知るのか。
 毎年、この時期になると不思議でたまらないことの一つだ。

 人間が天気図を利用するには、各地の観測データを集め、人工衛星からの画像なども参考にし、経験豊かな予報官の職人技に頼って作られたものをファクシミリやインターネットなどの最新の伝達技術によって手に入れなければならない。

 どんなに経験豊かな気象予報士でも、何も情報を与えられず、野原の真ん中に放り出してから「さあ、天気図を書いてみろ」と求めても無理な相談だろう。

 ハクチョウたちは、どうやって気圧配置を知るのか。

 ヒトが、科学技術を発展させ、大気の動きを天気図という形で認識するようになるよりはるかな昔、数百万年前から彼らは渡りの旅をしていた。
 その証拠に、ハクチョウの渡りのコースは、1~2万年前の海岸線に沿ったものだととうい人もいる。

 とにかく、われわれは、われわれの知恵の及ばない様々の優れた能力を多くの野生動物が、はるか昔から身につけているということを知らねばならない。
 自然への畏敬の念とか、自然を敬う心は、このような具体的な事実を一つ一つ認識した上に育つものではないだろうか。

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