2012年5月22日火曜日

知床の風に吹かれて

今日は、暖かい一日だった。同時に晴天だが、やや風が強かった。
 バイクで走る僕に風が戯れかかってくる。不規則に車体を左右に揺さぶるのだ。
 コーナーで、車体をどのくらい傾けるか、ちょっと迷っう。だが、そんな風と駆け引きしながら走るのも楽しい。
 空気の壁に一気に切り込んでみるのも良いが、今日のような風に纏わりつかれながら走るのは、見えない相手と会話しているようで飽きることがない。

 昨日の日食などは、計算で、いつどこで起きるか、あるいは起きたか、正確に答を出すことができる。
 太陽と地球と月の位置が宇宙的なスケールなので、一定以上の精度で計算できれば、小さな誤差は捨象できるからだ。いわばシンプルな物理法則で説明可能なのだ。

 自然界の法則は、基本的には、すべて簡単で単純なのだが、要素が増えるにしたがってその複雑さが増す。その増え方は、等比級数的だと思う。バイクを揺さぶる横風の計算などは、非常に難しいだろう。
 昨日の日食の時、日食観測の準備を整えて待っていたのに雨天や曇天で全く見なかった地方だってあるわけで、日食は予測できても、その時の天候は、予測不能だったのだ。(実際には、天気予報が的中していると思うが)

 核分裂反応による原子核崩壊というのは、比較的単純な物理現象で、そのエネルギーや反応時間などを計算で予測することは可能だ。しかし、工業的規模の原子炉で核分裂反応を起こした場合、そこで起きる生成物同士とか、原子炉の素材との反応など副次的な影響まで予測するのは大変だろう。
 そして、そこで壊滅的な事故が起き、放射性物質が環境へ放出された時、もう一つの複雑系である生物体や人体や生態系に対してどのような影響を与えるか、さらには、社会や経済がどういう影響を被るか、全く予測不可能な複雑さとなるだろう。
バイクで走りながら、次にどちら向きの風が来るか、ということ以上に複雑で解明できず、それよりもはるかに深刻で多くの悲劇を含んだ問題なのだと思う。

 これが、今日、知床の風との会話の内容である。

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