2012年7月25日水曜日

「ミナマタとフクシマ」・・・悪魔の相似形

NHK午後7時のニュースに続いて、水俣病の未認定患者の認定申請が今月で締め切られる問題を取り上げた「クローズアップ現代」をつい観てしまった。
 石牟礼道子さんの話に心が動いた。
 水俣病は、僕が高校生くらいの時から「公害病」として全国に知られるようになったが、現在に至るまで、多くの問題を引きずっている。
 そして、ここにみられる構図は、福島原発事故の放射線被曝による被害と瓜二つと言ってよい。おそらく、この先5年、10年後、原発事故に起因する同様の「公害病」が問題になってくるだろう。そして、その解決は、遙かに気の遠くなるような先になる。いや、本当の意味での解決は、やって来ないかも知れない。
 そんなことを暗示する番組内容だった。
 もちろん、そんなことではいけないのだが。

 そうであってはならない、と考えつつ、なぜそのように予感するのか。
 もちろん、それは、石牟礼さんも指摘していた通り、今の日本の政府が、国民の幸福について全く無関心だからである。
 経済成長を最優先させ、その利権に群がる政・官・財・一部の学者によって、ガッチリ固められた利益共同体が、あらゆる怨嗟の声を蹴散らすという構造が、少しも変わっていないからである。
「 東京に行ってみたけれど、そこに日本は無かった」という患者の言葉が鋭く突き刺さった。


 さて、いよいよ火曜日は羅臼湖までのトレッキングガイドだ。
 今の僕にとっては、ヒマラヤに挑戦するような緊張感を覚える。たった2キロ程度の道のりなのだが、羅臼湖がこれほど遠くに感じたことは、今までなかった。
 怪我からの回復の程度を測る指標として、全力を尽くしてみようと思う。
 もちろん無理は、しないつもりだが。
今日は、自作に「羅臼湖トレッキングガイド」に少し手を加え、第三版として印刷した。


羅臼湖トレッキングガイド
 羅臼湖について
羅臼湖は、知床連山にある湖で、湖と知床峠頂上との間にある天頂山の噴火に伴う溶岩によってせき止められてできた湖だと言われている。
 勝井ほか(1985)によると,羅臼湖は最大長約1.3km,最大幅約0.7kmの南北方向に細長い湖で,その標高は750mである。
 湖の西岸は知西別岳(1317),北岸は天頂山(1046)の南斜面に位置している.東岸は天頂山火山溶岩流動面の台地で,一の沼から五の沼まで5つの沼が点在しており,沼周辺及び三の沼と四の沼の間の平坦地,通称「アヤメ原」に湿原が発達している。
 湖の北東岸は遠浅で低層湿原になっているが、その北部は湖面より比高1mの平坦な段丘で,一帯にはミズゴケ湿原が発達している。
 この湿原の泥炭層の厚さは134cmで,その下層は火山灰質シルト,基底には溶岩が堆積している.
 泥炭層には3層の火山灰が挟在し,深度68~72cmの第3層の14C年代値は1070±35B.P.である.この年代値と泥炭の堆積速度から湿原の発達開始は約2500~3000年前と推定されている.
(引用;橘ヒサ子2006 知床半島羅臼湖周辺湿原の植生
              北海道大学大雪山自然教育研究施設研究報告 第40号)

 コース基本データ    道のり 2.6km
              高低差 78m
            最高点標高 754m(四の沼)
            最低点標高 676m(入り口)

 行程の概要
 入り口 ←(270m)→ 一の沼 ←(180m)→ 二の沼 ←(180m)→ 三の沼 ←(520m)→ 湿原 ←(505m)→ 四の沼 ←(545m)→  五の沼 ←(420m)→ 羅臼湖

コース解説
A. 入り口~一の沼
 知床横断道路から入り口を入るとダケカンバやナナカマドの林が続きます。ナナカマドにはナナカマドとウラジロナナカマドがあります。七月花を咲かせるミネザクラもあります。このあたりの斜面は南東に向いています。冬に北西の季節風が吹くと風下にあたり、吹きだまりができやすく積雪は5~6mにもなります。そのためこのあたりのダケカンバは積雪に押しつぶされ地上をのたうつように成長しています。
 コースはやや登りになります。高度が上がると樹木は次第にハイマツに移り変わっていきます。ハイマツの根元にはクロウスゴ、ゴゼンタチバナ、ミミコウモリなどが見られます。

B. 一の沼~二の沼
 一の沼周辺は中間湿原でスゲの仲間を多く、ヒオウギアヤメ、コガネギクなども見ることができます。ハイマツやダケカンバに囲まれてウコンウツギなどの低木もあります。
 二の沼へ向かう道は、あちらこちらに岩がゴロゴロとしている上をハイマツが覆っていてトンネルになっています。ハイマツの下には、コケモモ、イワツツジ、オオバスノキ、イソツツジ、ハナヒリノキなどツツジ科の植物やアカミノイヌツゲなどの低木が目立ちます。さらに、ゴゼンタチバナ、コミヤマカタバミ、ツマトリソウ、ツルリンドウなども観察できます。
 この間のもっとも高い場所は標高710m~720mのピークで、羅臼岳、知西別岳が美しく見えます。ピークを過ぎると道は二の沼に向かって急な下り坂になります。雨や霧の日には転倒に注意しましょう。

C.二の沼
 二の沼は木道のすぐ近くで雪田植生群落を見ることができます。雪田とは遅くまで融けずに雪が残っている場所のことです。独特の植物が見られます。二の沼の雪田群落ではチングルマ、エゾコザクラ、ミツバオウレン、ワタスゲなどが見られます。より近づいて観察したり写真を写したりしたいことでしょうが、木道から降りないように注意しましょう。

D. 二の沼~三の沼
 二の沼を過ぎると急な上り坂になりますが、それほど長い上りではありません。ただ、水が流れ下る道と歩く道が同じで、歩道が深くえぐられています。滑りやすく歩きにくいので急がずゆっくり進みましょう。道の両側はクマイザサの群落になっています。

E. 三の沼
 二の沼からの上り坂を登り切ると間もなく三の沼です。
 三の沼には、一の沼や二の沼ではなかったミズゴケがあります。一年中水量が安定していることがその原因です。ミズゴケが枯死してできたブルテと呼ばれる小さな島のような小丘の上にモウセンゴケ、ヒメシャクナゲ、ツルコケモモなど高層湿原特有の植物が生息しています。
 三の沼にはトンボが多く、八月後半になるとオツネントンボ、カオジロトンボ、ルリイトトンボ、ルリボシヤンマなどが飛び交っています。
 
F. 三の沼~湿原
 三の沼を過ぎるとしばらくササ原の中の平坦なコースになります。さらに進むと道が少しずつぬかるんできます。ゆるい沢の右岸に沿った緩やかな上りになってきます。右手に大きな岩がゴロゴロした沢が見えます。この辺りは「涸れ沢」と呼ばれていて大きな雪渓ができる場所です。そのためあちこちに高山植物の群落が見られます。歩道のすぐそばにも高山植物が多く、歩道をはずれて歩かないように注意しましょう。

 涸れ沢の緩い上りの突き当たりが湿原です。ここは乾燥が進みつつある湿原ですが、コース中最大の湿原です。初夏にはヒオウギアヤメの花が美しく咲きます。木道上を進みますが湿原の植物をよく観察してみましょう。湿った土の上にエゾシカやヒグマの足跡が残されていることもよくあります。

G. 湿原~四の沼
 湿原を過ぎ、しばらくササ原を進むと急な上り坂が現れます。コース中最大の上り坂で、720mから755mへ登ります。坂は二つに分かれていて、途中で一休みするかのような鞍部があります。ほんの短い区間ですが頭上を覆う樹木もあって、「森」を感じさせてくれます。「一瞬の森」でしょうか。
 後半の上りを登り切るとコース中の最高点を通って、すぐに四の沼に出ます。

H. 四の沼
 四の沼は小さな沼ですが水位が安定してます。また、三の沼では見られなかったヨシが生えています。小さな川が流れ込んでいるためでしょうか。ミズゴケもあり浮島状のブルテにはスゲの仲間が多く見られます。
 四の沼は中間湿原に分類されています。

I. 四の沼~五の沼
四の沼から五の沼にかけては、再びササ原の中を進みます。この辺りの道は雨でえぐられており深い水たまりも多くあります。しかし、道を外れて歩くと植生を痛めてしまいます。長靴を履いて、水たまりの中を堂々と歩くのが格好いいと思います。
 ササ原の中の所々にエゾオヤマノリンドウ、コガネギク、ハイオトギリなどが見られます。

J. 五の沼
五の沼は羅臼湖までの途中にある沼の中で最大の大きさです。ミズゴケが多く所々にブルテが発達しています。ブルテの上にはモウセンゴケ、ツルコケモモが多く見られます。また、よくヨシガモやキンクロハジロなどの水鳥も来ています。
 道は、五の沼の岸に沿ってダケカンバの林の中を進みます。足下に注意するのは当然ですが、頭上に横に張り出しているダケカンバの太い枝に頭をぶつけないように注意する必要もあります。

K. 五の沼~羅臼湖
 道が五の沼から離れるとき、ちょっと振り返ってみましょう。眼前に広がる水面の広さに五の沼の大きさをあらためて感じられることでしょう。
 道は緩い下りにかかり、下りきった所からササ原が広がります。木の間に羅臼湖の水面が見え始めます。この辺りのハイマツの生え方に注意してみましょう。皆、同じ方向(南東)に伸びています。このことから、冬期間のこの辺りの風の強さをうかがい知ることができます。

L. 羅臼湖
 やがて、羅臼湖へ向かう木道に到着します。湿原上を一直線に羅臼湖に向かいます。周りはスゲの仲間、チングルマ、ツルコケモモ、ウメバチソウ、ミツバオウレン、チシマワレモコウなどの花が咲く湿原です。ホソバキソチドリも見ることがあります。
 羅臼湖周辺の湿原は何万年もかかって形成された、一度壊されるとなかなか復元できない環境です。木道から降りないように注意しましょう。

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