2012年8月28日火曜日

カワウソの挽歌

 われわれは、カワウソの絶滅に立ち会うことになった。  もう、かない以前から絶滅しているのでは、と言われ続け「幻の存在」となっていたがこのほど絶滅が公式に認定された。その中には知床半島でも確認されたことのある北海道亜種カワウソも含まれている。  それにしても、いつの間にか野生動物も国家によって「認定」されなければやすらかに?絶滅もできない世の中になっている。  さらに現在、「絶滅の認定」を待っている種がどれほどいるのだろう。 いつ絶滅するともわからない人類が他種の絶滅を「認定」するというのもある意味でブラックユーモアかも知れない。  カワウソ絶滅の原因は何だろう?    川の水質悪化    餌となる魚類の減少    ダムによる寸断    競合する外来種ミンクの侵入    毛皮のための乱獲    カワウソはかつて、身近な存在であり、河童伝説の原型になったという説もある。  カワウソそのものも伝承に登場する。また、アイヌ語では「エサマン」と呼ばれ、アイヌの伝承にもしばしば登場している。  ニホンカワウソの毛皮は保温力に優れているため、毛皮を目的に大正から昭和初期にかけて多数乱獲された。これが絶滅に追い込んだ原因の一つ。  1928年(昭和3年)捕獲禁止となるが、密猟が絶えなかった。  戦後、香川県から愛媛県にかけての沿岸部、および高知県南西部の沿岸部にわずかに生息域が残っていたが、農薬や排水による水質悪化、高度経済成長期に伴う周辺の開発、河川の護岸工事等による環境の激変が、生息数の減少を大きく進めた。  さらに、刺し網などによる溺死。  養殖魚への食害を防ぐための駆除も、数をへらす要因となった。  最後の個体群は当初猟師だけが知っていた個体群で、細々と密猟されていたという話もある。  1974年7月25日に高知女子大学の調査で、高知県須崎市にある新荘川でメスの成獣1頭が生け捕りにされたのが、最後の捕獲となった。  また、目撃されたのもこの新荘川における記録が最後である。  1993年、新荘川の支流で糞と食べ残しの痕跡の報告があるが、必ずしもカワウソのものと確定されていない。  絶滅はその種との永遠の別れである。 エゾオオカミ。  ニホンオオカミ。  ニホンカワウソ。  われわれは、絶滅種の十字架を永遠に背負っていくことになる。  われわれ自身が絶滅する日まで。

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