2012年8月3日金曜日

朝陽に輝く飴色 羅臼昆布は こう作られる

羅臼の昆布漁は7月から始まった。今は、その真っ盛りの時である。
 朝、出勤の時、思い思いの方向を向いた小舟が浜近くにたくさん浮かび、「マッカ」とか「サオ」と呼ばれる10メートル以上もある長い棒を使って、海底のコンブを巻き付けて採る風景を見ることが出来る。
 コンブ採りは、岸のすぐ近くで行われる。しかし、岸のすぐ近くでさえ10メートルを超える長さの器具を使わなければならないほど知床半島の海は急に深くなっている。
青く澄んだ海底から飴色のコンブが引き上げられ、朝の光が半透明なコンブを通って輝く様子は美しい。

 知床の森から流れ出た中小の川は、みな急流で、森の栄養成分を海に直送する。森が豊かであれば海も豊かになる。羅臼の前浜のコンブはそのような自然環境が育てる。

 羅臼昆布は、高級なダシ昆布として有名だが、こうして海底から引き上げられた後、洗い(表面の汚れや貝などの小生物を取り除く)→乾燥(天日または乾燥室で水分を飛ばす)→しめり(乾いた昆布を夜露や霧などに晒して再び湿らせる)→日入れ(再び天日で乾燥させる)→耳刈り(両端の薄い部分を切り取って整形する)などの複雑な工程を経て仕上げられる。
 この作業工程は羅臼昆布特有のもので、これによって身が厚く、深いダシが出て、しかも昆布自体も軟らかい羅臼昆布ができあがる。

 今朝は、無風に近く海面は鏡のようになっていた。
 小舟でコンブを採る父、それを浜で家族が待ち受け、一斉に作業にかかる。家中が協力して生きる姿がここにある。
 最近では、多くの地域で失われたものが、確かに息づいている。知床で息づいているのは、野生生物ばかりではない。


0 件のコメント:

コメントを投稿