2012年8月7日火曜日

封印すべき技術 その2

核エネルギー(原子力)を(現在の)人類が利用するには、技術的にもモラルの上からも(まだ)難しいということをよく聞く。昨日の小ブログにもそのような趣旨のことを書いた。
 今日は、昨日書き足りなかった分を補足したい。

 もう30年も前に亡くなった人の子を宿すなどということは考えられないだろう。だが、技術的には可能だ。技術的には。
 ウシやブタなど家畜の世界では、1965年頃から-196℃の液体窒素で瞬間的に精液を凍結して保存する技術が確立していて、数十年前の精液を使って受胎させることが可能になっている。
 ヒトに対してそれが行われないのは、純粋に倫理上の理由からだけだ。
 これは、「実行可能だが、実行しない」という例の一つだろう。
 原子力技術も今は、そういう段階ではないかと思う。

遺伝子組み換え技術もよく考えなければならない技術だと思う。
 今、やろうと思えば高等学校の理科室程度の設備と器具で、簡単な遺伝子組み換えは実験できる。数年前に現役を引退した僕でさえ、この実験で「光る大腸菌」を作った経験がある。
 もちろん、これをやるためには厳しいガイドラインがあり、遺伝子を組み換えた生物は絶対に実験室の外には出さない、実験終了後は念入りに滅菌することになっている。

なぜなら、このような遺伝子操作によって、抗生物質への強い耐久性を備えたバクテリアができあがったりする危険性が否定できないからである。
 その一方で、農業生産の分野に遺伝子組み換えの技術が積極的に用いられるようになった。
 たとえば、ダイズの遺伝子を組み換えて、ある種の除草剤への耐久性を高めた品種を作り出し、その畑に大量の除草剤を散布することで農作業の省力化を図り、コストを削減する。そして、低価格で国外の市場を席巻しようという戦略だ。アメリカがこれの最先端を走っている。
 また、ある種の昆虫の腸内で毒物として働く物質で、土壌細菌が作り出すものがある。この細菌の遺伝子をトウモロコシなどに組み込んで、トウモロコシ自身がこの物質を生産するように改良することで、昆虫の食害を減らし、殺虫剤の使用量をへらしてコスト削減に役立てるというものも実用化されている。
今のところ、この細菌の作り出す毒素は昆虫には有害だがほ乳類には無毒であると言われている。
 しかし、遺伝子の塩基配列のわずかな変化で、作られる物質がどのように変化するか、わからない。
 農薬(殺虫剤)の使用量が減るのは、一見良いことに思われるが、何のことはない、植物自身が殺虫剤を合成してしまうのだから怖い感じがする。

 ヒトは、何十万年もかかって作物を改良し、改善した点をわずかずつ蓄積し、優れた品種を生み出し、利用してきた。
 その改良のために費やす時間を一気に(桁違いに一息に)縮めようというのが遺伝子操作なのである。

 僕は、食物は生命活動の基本となる物質なのだから、工業的な生産や加工には馴染まないと思っている。極論かも知れないが、食物の生産や加工、流通を営利の手段とするべきではないと考えている。

 残念ながら世の中の流れは、それとは全く反対の方向を向いてしまっているけれど。

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