2012年9月8日土曜日

三方六とマグナム

「マグナム」と聞いて、大部分の人は銃弾のことを考えるのではないか。
 口径の割に薬莢(やっきょう)が大きく、つまり多量の火薬が入っていて、破壊力の大きな実包(実弾)のことを「マグナム」と呼んでいる。たとえば「22ウィンチェスター・マグナム・リムファイア」のような弾のことだ。

 十勝の池田町のはずれに、小さな店があって、どういうわけかそこでは十勝管内にある有名な菓子メーカーの工場から出てくる菓子「三方六」の切れ端を売っている。
 三方六は、シラカバのふとい枝を模したもので、バウムクーヘンを周りにホワイトチョコレートで包んである。その「枝」を25cmくらいに切って箱詰めされて売られている。大変おいしいけれど結構高価で、普段、自分用には、なかなか買えない。 
この切った枝の両端のホワイトチョコレートが周りだけでなく、木口面にもかかった状態の「切れ端」が深さ40cmくらいのビニール袋にいっぱい詰め込まれ、一袋100円くらいで売られている。
 もう大分昔のことだが、池田町を通った時に、その店に立ち寄って、買い求めたことがあった。
 店には陽気なおばさんがいて、愛想良く売ってくれた。品物を渡す時、そのおばさんが 「ワインはどう?要らないかい?町民還元用のロゼもあるよ」と勧めてくれた。
 うーん、どうしようかと少し迷っていると、普通のワインボトルの二倍ほどもあるような大瓶を取り出して、
 「こんなのもあるよ。たっぷり飲めるでしょ。マグナムだよ」と言った。

 彼女のやや所帯じみた風貌と「マグナム」という単語が、あまりにもかけ離れていたので、思わず笑った。
 この楽しいやりとりの末、普通のサイズのワインを買って帰ってきたのだが、帰り道でもこのやりとりを思い出して笑ってしまった。
 僕は、このおばさんが普通より太いワインをあろうことか銃弾に例えて言ったものとばかり思っていた。

 ところが、先日、必要があって銃についての本を読んでみたら、「マグナム」というのは、本来が「ワインの大瓶」のことを意味する言葉だとわかった。
 彼女を嗤ったつもりはないが、結局は彼女の使った「マグナム」という言葉は正統な言葉だったのだ。
 帰り道の思い出し笑いも、自分の無知からきたものであると知った。

 まだまだ知らないことは多い。
 勉強を続けていかなければ、と思い知らされるできごとだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿