2012年10月2日火曜日

冬のゆりかご

 旅の帰り、飛行機は1万メートルを超える高さでシベリアの上空を飛んでいた。  そろそろかな、と思い窓の遮光シャッターを開ける。眼下にはシベリアの山が広がっている。やがてバイカル湖が見え始めた。  僕がシベリアに魅入られる原点となった湖。  「シベリアの真珠」にふさわしい深い色の湖面が朝の光を照り返していた。  何度目の邂逅だろう。バイカルをまた、見ることができた。  それだけでも、旅に出た甲斐がある。  ふと見るとバイカル湖の東岸に沿って伸びるバルグジン山脈の頂が、雪を被っている。まだ、9月末。一瞬目を疑った。一年中消えない雪か、と思った。  だが、この山脈の標高は2800メートル程度で、万年雪は無いはずだ。  それにふわっと粉砂糖をまぶしたような積もりかたに見える。新しい雪だと思う。  初雪かどうかはわからないが、これからやって来る冬の雪に違いない。  ああ、冬は、こんな場所で、こうやって生まれているのだ。  こんなことを考えていると、僕の住む北海道に冬がやって来るのが待ち遠しいような思いがしてくる。

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