2012年10月6日土曜日

復讐を志向する日本社会の危うさ

 10月に入り間もなく1週間が経つ。  まだ、紅葉は、はっきりとは見られないが樹木の葉の緑色は、すでに勢いを失いつつあるように感じる。冷え込みが来れば一気に紅葉することだろう。  今度のヨーロッパ旅行では有形無形の収穫がたくさんあったが、ウィーン大学の日本研究の先生方と出会ったことは、取り分けて印象深い。ウィーン大学には「東アジア研究所」というセクションがあり、様々な研究者がいろいろな分野の研究をしている。そして、皆非常に優秀な人々だ。  なかでも印象深かったのはローランドさんという方だった。  ローランド・ドメーニグ先生は東アジア研究所の准教授で、日本映画の研究をしている。日本人の僕が知らないような映画についてまで、よく知っていて、穏やかながら説得力ある語り口で親しげに話をしてくれた。  それもそのはずで、帰国してから調べてみると、彼は、日本の映画界でも名前の知られた日本映画研究の第一人者だったのだ。 2月には日本映像翻訳アカデミーの特別講義で講師を務めている。その紹介文によると  「(ドメーニグ氏は、)独自の視点を持つ日本映画史の専門家としても世界的に知られています。また、映画祭のキュレーターやプログラマーとして国際的に活躍すると同時に、『もののけ姫』(宮崎駿監督)のベルリン映画祭出展用ドイツ語字幕を手がけるなど映像翻訳者としても実績を残しています。」  ローランドさんは、「最近の日本映画の特徴として『復讐』をテーマにしたものが増えている」とう話してくれた。  「何か思い当たるような背景はありますか」ときかれて、  「社会全体が、復讐に寛容になっているように思う。死刑判決の基準が下がっているという指摘もあるし、死刑制度を指示する世論の割合も高止まりしているし・・・」などと答えたが、氏はこのことは既に知っている様子だった。  社会運動家ではなく研究者であるローランドさんは、初対面の僕に対する配慮もあってか、この話題をそれ以上踏み込んで展開させようとはしなかったが、今の日本社会が向かっている方向の危うさを言外に滲ませたように感じられた。  責任の追及と復讐とは違う。  現代の日本社会の向かおうとしてる傾向を、海外から冷静に観察している人々がいるということをわれわれは知るべきで、そういう人々の意見にもっと耳を傾け、この国がどこへ向かおうとしているかを厳しくチェックするべきだろう。  それら研究者の見解は、客観的で利害関係が無いだけに聴く価値があると思う。  また会って、もっと話を聴いてみたい人々の一人である

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